PRINCE OF LEGENDシリーズでの「歩夢」の扱いの杜撰さについて

※プリロワに関する若干のネタバレあり

 

 


歩夢くんそしてマサのプリロワ実装ありがとうございます。アンケートでロワ以外のゲーム(ザゲ)への課金額を正直に書いてよかったです。歩夢くんをガチャから無事にお迎えし、イベストカドスト共に彼の分は読み終えました。ラファエルもとい久遠の分も読み終え、胸キュンしたと同時に歩夢くんがプリロワの中でこういう風に描かれる可能性は今のところ低いのだろうなと落ち込みもしました。


以下プリロワ、改めプリレジェでの歩夢の扱いが如何にぞんざいであるかを歩夢の姫*1としての視点から考えさせていただきます。プリロワがドラマ本編で散々な目に遭ったサンマルチノの救済(ノアとの濃厚接触の回避による惨劇の消滅)を行なった点は私自身も実感・感謝しておりますが、それに関しては色んな方々が述べてくださっているので割愛します。

 

 


プリレジェの貴族シリーズは劇場版の『貴族降臨』の撮影が最初であり、その後に前日譚としてドラマ『貴族誕生』が撮影されました。よってドラマ版の設定のうち少なくない部分が映画撮影後の後付けであり、その最たる例がおそらく「歩夢」の存在です。貴族誕生のバックステージ映像*2にて、歩夢役の前田公輝さんが「素敵な作品のプロローグに携わることができてよかった」といった旨の発言をしていらっしゃるので、ご存知のとおり劇場版に名前すら登場しない*3歩夢は「信虎」の引き立て役あるいは兄弟コンテンツであるハイローの轟ファン(それこそ私のような)を自コンテンツへ呼び込むための、そして特別出演のDAIGOさん演じる「シニア」を物語からドラマチックに退場させるための打上げ花火でしかなかったのだと思われます。


ところが歩夢、もといクラブ・サンマルチノの二人は制作サイドが想像していた以上に人気が出てしまいました。信虎も劇場版には名前しか登場しませんが、ドリーの内部(心情)にて「ナイトリングでの権力を駆使して「信虎」の仇の情報を探す」という歴とした役割が課せられています。回想シーンで幼い日のシンタロウ(ドリー)とシニア(ドリーの兄)がプロレスを見ているシーンがあることからも分かるとおり、有識者の方々曰く貴族シリーズにはプロレスのモチーフがふんだんに取り込まれているらしく、それに準えれば「虎」の名を冠する信虎には「タイガーマスク」を暗示させる何かがあるのではないかという考察もなされています。しかし歩夢に関してはそのようなものを見かけたことはありません。ナイトリングのNo.1になるという信虎の夢のために歩む歩夢くん。数日前に「歩夢の中身は信虎でいっぱいなので空っぽ」というようなツイートを偶然拝見し、まさにその通りだと思いました。それはキャラクター(性格)としてだけではなく、彼を舞台装置としてしか存在させる気が無かったプリレジェは、本当に歩夢くんに対して何も用意していなかったのです。

 

 


信虎に尽くす歩夢と近いつくりのキャラクターに、奏に尽くすメガネ王子こと久遠誠一郎がいます。彼はある意味「本来のプリレジェ*4」ともとれる王子シリーズの主人公、朱雀奏の第一側近であり幼馴染ですが、実は親友以上の感情を奏に対して抱いています。そしてそれは絶対に知られてはならない、奏本人にも、それ以外の人間にもと葛藤しながら、最終的に自分の気持ちよりも奏の気持ちを尊重し、ヒロインである成瀬果音とのゴールインを後押しします。久遠の奏への並々ならぬ思いは無印ドラマ版の中でも、そして無印劇場版でもしっかりと描かれています。貴族降臨でも、奏からその場にはいない久遠への『HONESTY』の弾き語りと共に流れる回想として、久遠が如何に奏に対して誠実であったか、大事に思っていたかが改めて提示されます(久遠(ラファエル)サイドの心情について、撮影した重要なシーンがいざ公開されたら使われておらず、久遠を演じている塩野瑛久さんが「あれ、なんで俺、こんな芝居したんだって一瞬混乱しました笑」*5*6と仰っているので、久遠についても貴族降臨での扱いは丁寧だったとは言い切れません)。


しかし歩夢にはそういった背景が(現時点では)一切ありません。クラブ・サンマルチノのNo.2、それはキービジュアルの屏風に描かれた対峙する龍虎のようにNo.1と競い合い高め合うためのNo.2ではなく、信虎をクラブだけじゃなくナイトリング全体でのNo.1に押し上げるためのNo.2。ドラマ及びゲーム内でも、信虎が「クソみたいな家で育ってきた俺」と言い「味噌汁の味すら知らない」ことにより凄惨な環境で育ってきたであろうことが提示されますが、その背景や内容は歩夢・信虎共に具体性を欠いています。いや味噌汁の味を知らないってお前ら学校給食はどうした!?みたいなツッコミが散見されましたが、そこは一先ず置いといて。どうして彼らがナイトリングに辿り着いたのか、伊集院信虎と歩夢が互いにとってどういった存在なのか――久遠が奏の幼馴染であり親友であるように――は一切描かれていません。前田さんがプリロワ参戦時の動画コメントにて歩夢のことを「信虎を愛してやまない兄貴のような父親のような存在」と仰っているぐらいしか、それらしいものはありません。脚本、少なくともドラマとして公開された映像の中に描写が無いんですから、そうとしか言いようがないですよね。

 

 


貴族の彼らも「PRINCE OF LEGEND」シリーズのキャラクターなので、当然のごとくゲーム版のPRINCE OF LEGEND LOVE ROYALE(プリロワ)にも追加されました。貴族サイドとして最初から登場していた信虎は、イベストにメイン・サブで登場しては子虎ちゃん子虎ちゃんとヒロインに懐き、時には年上っぽくしかしやんちゃに振舞い、かと思えば優しく気遣い、カドスト(2020WD)ではヒロインに(僅かですがネタバレのため注釈に記載します*7)とちょっとした切なさも覗かせながらお返しを渡してくれます。ちゃんと「プリロワ」という、恋愛シミュレーションゲーム*8のキャラとしての役割を果たしています。貴族の主人公であるシンタロウ(ドリー)も、イベストしか読んでいませんがヒロインとの親愛や恋愛感情を匂わせる雰囲気になっています。


奏に思いを寄せている久遠についても、他キャラのストーリーでは相変わらず奏奏奏、特に奏の個別ストでは何かとちょっかいを出してきます。しかし久遠本人の個別ストやイベストでは最終的に久遠とヒロイン(プレイヤー)が結ばれ、久遠の心境の変化についても奏の存在を大事に思い続けたまま、75話をかけてじっくりと描かれています。久遠もまた乙女ゲームのキャラとしての役割を果たしながら、他キャラストでは奏が第一!という描かれ方も引き続きされているのでキャラ崩壊なども起きていません。今回のイベスト(個別ルート分岐あり)でも引き続き「彼女」という設定は保たれています。


対して現段階での歩夢ですが、今回のイベストで結構際どい発言をしています。「ガキと金にならない女には興味ない」「女は信用すんなって言ってんだろ」。「ガキ」も「女」も、高校生であるヒロイン(プレイヤー)の設定と合致しています。乙女ゲームのキャラとしては「そう思ってたけどこいつだけはなんか違う」というお決まりパターンへの布石とも取れますが、貴族キャラには王子のように頑張れば誰でも読めてゴールインまでできる個別ストーリーがありません。そのためイベストやカドストといった特殊ストーリーしか持たない彼は、このままだと信虎の存在が無ければ「本当に女を「食い物」にしているだけのクズホスト」になってしまいます。これに関してはプリロワの歩夢の描き方が下手であるとも感じますが、そもそものプリレジェ貴族シリーズが歩夢に確たる設定や描写を持たせなかった結果、プリロワそして彼を演じる前田さんご本人も「歩夢」のキャラクター設定を「信虎」に依存させざるを得なかったところが多分にあるのではないかと考えています。


私はこれが非常に口惜しく、またプリロワという「プリレジェキャラとの恋愛やそれに近しいシチュエーションを楽しむ」ゲームへの歩夢くんの登場を待ち望んでいたプレイヤーとして失望もしました。それを言ったら初期や他キャラルートでの久遠もヒロインへの対応は歩夢とどっこいどっこいです。しかし久遠は「女性」を蔑ろにしているのではなく、奏に関するものにやたら敏感、特に自分と奏の間に少しでも割って入る可能性があるものを敵視しているだけです。今回プリロワに現れた歩夢は、ホストという主に女性を相手とする職業でありながら「金にならない女には興味ない」「女は信用すんな」と、接客業として敬うべきお客様に対して心の底では見下げているという最低の人間として描かれています。そういう考えを抱くようになったバックボーンは当然どこにもありません。それどころかドラマ4話冒頭で歩夢くんは、ノアに唆されてクラブ・テキサスの顧客情報を流出させるために盗もうとした信虎を「こんなんホスト失格だぞ。やっぱりやめた方がいい」と一度は止めています。ホストとしての矜持があった歩夢のそれはプリロワでは少なからず失われており、キャラの描き方に悪い方向での齟齬が発生しています。キャラの掘り下げも、プリロワという「本編そのものではないゲーム」がどこまで許されているのかは不明です。

ちなみにプリロワの信虎はホストという自らの職業に偏見を抱くエコノミークラスの彼らに対して、過去のイベストで「お前ら、ホストは女を騙して巻き上げるもんだと思ってねえか?」「全然違う!女はホストに夢を見る。俺が夢を叶えることが、女の子達の夢を叶えることでもあるんだ!」と説いています。

 

 


歩夢くんや彼を取り巻く他の子たちとの楽しいやり取りを期待してそこに行ったら居たのは途方もないクズだった。よくよく考えてみれば、彼はドラマで信虎の仇と(勘違いさせられて)シニアを殺そうとしたとんでもない男だったので間違いではないのかもしれません。だって本当ならそれでおしまいの人形でしかなかったんですから。それでも、信虎ちゃんとヒロインが全日土木で楽しく隠れんぼ(※誤解を招く表現)したり、学園でサッカーやってずっこけて泣き付いてきたり、「子虎ちゃんの応援」「そんな顔しちゃだーめ」と励ましてくれたりしたように、私も歩夢くんとそういう風に、ノアのいない世界で楽しく呑気に過ごしたかった。「思ったより子供だな」の台詞が可愛らしさの表現ではなく、信虎の言う「恩人」が「ガキ」だったという侮蔑の言葉だったなんて知りたくなかった。みんなカドスト読んでくれ。今回のガチャの歩夢くんは1枚お迎えしたらカドスト全部読めるから。ちょっと優しいから!ちょっとだけど!取ってつけたような優しさだけど! ガチャが無理なら試しに推し王子(ではないが)に設定してホーム画面でぽちぽち突っついて!こっちのこと気遣ったりランチに誘ったりしてくれるから! あとアラームボイスの「朝だぞー!起きろー!」の後の文字に書き起こされてない苦笑から滲み出る「(しょうがない奴だな)」感をみんなも味わってくれ……歩夢くん……好きだ……

今挙げたように要所要所で胸キュンを出せるのだから、これ以上歩夢くんの描写を信虎に依存させないでほしいです。信虎ちゃんファーストの歩夢くんが嫌、なのではなく「歩夢」というキャラクターが信虎ありきになってしまっているのが、つらくてかなしい。人形に息を吹き込んだなら、ひとりでも立てるように最後までやり通してほしい。あとシャツの柄がダルメシアンじゃないこと(ちびキャラはちゃんとダルメシアン)、右手の2つの指輪がなくなり左手の指輪もゴツめの物から華奢な物になっていたのも驚きました。流石に高価そうなスーツは取っておいてくださったようですが。衣装に関して一番感謝すべきは歩夢のために黒髪→金髪→黒髪→…を幾度となく繰り返してくださった前田さんの毛髪と頭皮ですね。ご自愛ください。

 

 


今後歩夢くんにも、信虎ちゃんとのホワイトデーみたいな展開があって、手の平超高速回転できるようになることを祈っております。期間限定とはいえ頑張れば誰でも読めるイベスト内でのキャラクター描写も、もう少し改善してほしいです。諸々の払い戻しで政府がくれる額以上の返金予定がある課金厨より

 

 


関連ツイート

 

普通にサンマルチノコンビも好きです。二人ともおいしいものいっぱい食べてくれ

 

 


関連記事

sdppp.hateblo.jp

べらぼうに長いので最初の方にある奏と果音(カノン)のネーミングのところだけ読んでいただければ嬉しいです。

 

sdppp.hateblo.jp

これも特定のキャラクターへのクソデカ感情考察記事ということで貼っておきます。

 

*1:ホストが自分を担当としてくれる女の子のことをそう呼びます。プリロワでは今回のイベストのエピソード1でゲレロがヒロインを、ドリールートにて寿希也がお客様を「姫」と呼びます。完全互換ではないですが、プリレジェ(王子)の「プリンセス」と言ったところでしょうか。さらに平たく言えばプリロワが想定しているプレイヤーのメイン層、要するに「夢女」です

*2:

ドラマ「貴族誕生-PRINCE OF LEGEND-」[Blu-ray]
 

*3:オープニングのコール映像はドラマの流用、ただしよく聞くと音声のみ歩夢・姫たち共にドラマと異なっています

*4:貴族シリーズは「プリンスイズデッド」を謳っており、また実際に久遠役の塩野さんと鏑木役の飯島くんが「今までのプリレジェ(の雰囲気)どこ行った?」と感じたと発言・同意をしています(確か日本映画ナビ)

*5:

日本映画navi vol.86 ★表紙:山﨑賢人 (NIKKO MOOK)

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  • 発売日: 2020/03/02
  • メディア: ムック
 

*6:

Audition blue (オーディション ブルー) 2020年 4月号

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  • 発売日: 2020/02/29
  • メディア: 雑誌
 

*7:「(前略)これは君専用だから、ほんとだから!信じて!(後略)」ちなみにカドスト内に動画があるタイプのものです

*8:公式サイトに「王子たちとの恋を進めよう♥」「あなたを巡る恋のバトルが開演!?」と書かれているのでそう明言して問題無いかと