先輩へ

キヨスミ先輩へ


先輩も風の噂で聞いているかもしれませんが、今年ついに新しい千石さんが舞台というテニスコートの上に立ちました。先輩は私に、千石さんのことを好きになった時のことを思い出させてくれました。でも何年も先輩の姿を追い続けているうちに、いつしか紙や画面の中の千石さんよりも、同じ次元で色んな景色を見せてくれた先輩の方が大事な存在になっていました。だから私は、自分が新しい千石さんと出会った時に何を思うのかが怖かった。先輩がもういないことにがっかりするのも嫌だったし、先輩以外の人にあっさり落ちるのも嫌だった。わがままですね。

実際に劇場で、新しい千石さんが新しいカラーリングのユニフォームを着て踊るのを見た時、私は素直に新しい千石清純がこの世に誕生したことを祝福できたような気がします。私たちはまた千石さんに会えるんだって、少し泣きそうになったりもして。彼は先輩じゃないけど彼も間違いなく千石さんで、そう思える千石清純が私たちに会いに来てくれたことが、本当によかった。一番好きなのは先輩だけど、千石さんのこともまだまだ好きなんだなって安心できました。


この間、先輩の「……いい子だ!バイバイ!」を聞きたくなって、久しぶりにチムライを見返しました。お見送り前の先輩の挨拶だけ見るつもりだったのに結局ぜんぶ見ちゃって、客席の中で女の子たちに囲まれて楽しそうにシャカブンしてる先輩を見てたら涙が落ちました。私は先輩がたくさんの女の子に囲まれて幸せそうにしている姿が大好きでした。それだけじゃなくて、テニスのことも大好きで、部長とかじゃなくても誰よりもチームメイトを大事にしていて、亜久津のことはあんまり好きじゃないんだか気にかけてるんだか許したんだかわかんない感じで、途中から段々可愛さステ振りになってきてると思いきや久々に会ったらカッコ良さ極振りだったり、知らない子ばかりの中でも持ち前のコミュ力でいっぱい絡んで、とにかくそういう、先輩のぜんぶが大好きでした。


私が今いる世界では、キヨスミ先輩のことを大っぴらに(?)祝福するのは多分イレギュラーというか、あんまりよくないんじゃないかなあって思う人もいるのかもしれません。でも私は、こういう時じゃなきゃ先輩も自分のことを思い出してくれないんじゃないかなあって思ったりもしています。先輩にも、先輩を演じてくれた子にも、自分が千石清純だったことをずっと忘れないでなんて言いません。だけど先輩も、先輩のことを好きだった女の子たちも、今日みたいな日に少しだけ、昔のことを懐かしんでくれたら嬉しいです。それ以外の日は私がずっと、忘れないからね。


キヨスミ先輩、誕生日おめでとうございます。私と出会ってくれて、ありがとう。

 

 

 

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