肖像の先に君は「王子様」の肉体を観るか / テニミュ3rd四天宝寺雑感

皆さんは「2.5次元舞台」としてのテニミュのキャラクターに満足していますか? 分かり易いけど範囲を狭める言い方をすれば、「舞台上のキャラクターを原作のそれを再現したものと見做していますか?」ということです。しかしテニスの王子様、あれだけの人数そして世界を3周していることもあり、納得できる(できた)キャラもいればそうでないキャラもいると思います。私の場合、「みんな違ってみんないいよね」の代表格が跡部、「みんな違ってみんないいけどみんな決定的に何かが違うよね」の代表格が忍足侑士と白石蔵ノ介でした。侑士に関しては、あれは2次元(とCV木内)の成せる技だったのだと、納得できる「彼」が舞台上に立つ姿を拝める日が来ることを諦めています。

 

私が「テニミュ」という3次元*1、自分と同じ世界に存在する白石蔵ノ介にひたすら求め続けていたのは、ビジュアルを含めたスペックの高さとそのバランスでした。無駄を厭うミスターパーフェクト、そして数少ない作者お墨付きの美形キャラ*2。白石は実際の人気も然ることながら、設定やスペックという物理でも殴りに来るキャラクターなのです。侑士は私にとって雰囲気がモノを言うキャラの筆頭なので早々に諦められたのかもしれませんが、白石はかつての彼らの演技面(内面)には満足できたこと、そして外見という次元を越えて共通する尺度がモノを言うキャラだからこそ「理想の白石くん」を諦められなかったのかもしれません。1stAのハルは歴代一の美形ではあるもののそのタイプが白石とは違って柔和、歌が下手ではないもののダンスの良さに比べると劣る。Bのヒデはダンス・歌ともにバランス良く出来るタイプではあったものの、顔が濃い上に演技もやや濃い。あんざいくんは2ndモンにならなかったこともありそこまで注視していませんでしたが、演技なら彼の白石が一番好きだったかもしれません。しかしダンスや歌で「上手い」キャラ・キャストに名乗りを上げられるほどではなく、また顔も白石にしては特徴的。こうも色々難癖を付けているとお前そんなに白石のこと好きだったの?と思われそうですが、10本の指には入らないので精々足の指で数えられる内に含まれる……かな……?ぐらいのレベルです。しかし私は他のどんなキャラクターよりも、理想の白石くんが観られる日を待ち望んでいました。

 

 

 

先日、私も新しい白石くんと会ってきました。クリスマスの夜の青年館で校歌を歌って踊る3rdの彼の姿は、特定のステータスにスキルを全振りすることなく、しかし歌もダンスも白石としての立ち居振る舞いもバランスよく「出来る」白石くんでした。個々のスキルの高さなら、他のシーズンの彼の方が良いのかもしれません。でも何かが高いということは、他の低さが目立ってしまうということでもあります。白石の場合、弱点は「無駄」に繋がります。バランスよく出来ることは白石を演じる上での無駄を省くことに他ならないのです。ビジュアルもパッと見はアイシャドウの濃さで中和されてしまっているけれど、本当は涼しげな輪郭の目元。同様にアイシャドウが濃いミュキャスに跡部のみうらくんがいますが、跡部と白石は顔のタイプが異なるのでましこくんはアイホールよりも目の際の化粧に力を入れた方がより良くなるのではと感じました。そしてもう一点特筆したいのが、日替わりで小春のサングラスをかける時の他の選手からの「(ほんまに大丈夫なんか……?)」という空気感。私は跡部役を部内最年少キャストにしたことは大きな失敗だと思っている*3のですが、反対に白石役に関しては、下から数えた方が早い年齢の子をキャスティングしなければあのお笑いに対する「要介護」感を出すのは難しかったのではないかと考えています。ああやっと、やっとこのレベルの白石くんが来た!と感動したと同時に、このレベルでも心の底から満足できてはいない私は永遠に3次元の彼らに白石くんの姿を重ねられないのだと、自分自身への落胆も感じました。

 

3rd白石くんよかったよブログではありますが、彼だけをアゲるつもりはないので他の白石役同様にウィークポイントも挙げておきます。特徴的な声と厚めの唇。ビジュアルにしてもスキルにしても、お前が言うほどじゃねーだろと思う方も少なくないと思います。単純な顔の整い具合なら当時のハルが一番では。声は白石を最初に演じた声優のほそやさんが、自らの声を「特徴が無い」と評していたのを覚えています。それに従えば、白石の声は特徴的ではない方がベターなのでしょう。

 

 

 

私の3次元の白石蔵ノ介へのこだわりは、裏を返せば白石が私の王子様ではないことの表われでもあります。あくまでも私の場合は。初めてテニミュを観た時に一番好きだった跡部氷帝の彼らを見て、原作の彼よりも控えめだとかそういうことも思ったけれど、それ以上に「好き!」や同じ次元に彼がいる喜びが上回ったので当時の私は写真を買い、次の公演も観に行くことを誓ったんだと思います。もりたのキヨスミにしてもそうです。何度も記しているとおり、彼が原作の千石そのものだとは思いませんが*4、それでも彼は私に夢中になって読んだ漫画のことを思い出させてくれました。舞台の上の彼に重ねる跡部や千石の肖像を、私は心の中に抱えていました。しかし白石にはそれがない。私の中の白石に関する思い出は、白石を好きだったりそうでなかったりするフォロワーや友人らに付随するイメージ程度しかありません。抱える思い入れが無いからこそ、私は漫画片手に「原作たれ」「紙の中の白石たれ」と肉体を持つ彼らに迫ってしまうのです。テニミュ2.5次元舞台という原作を持つ作品である以上、それは決して間違いではないのですが。

 

 

 

 


残りの感想は適当に。

 

・小春がめちゃめちゃよかった。「面白いやつ」にも色々いるけど、どんなに分類しても大半が行きつくのは「こいつがやるから面白い」だと思う。小春ないし四天宝寺は元々テニスの王子様テニミュに於けるその「こいつ」だという下地はあるけれど、それだけじゃなくて試合という短時間の中であっという間に「こいつ」になったのが小春のもりたくん。私が観た公演でユウジが桃城の真似をして「どーん」って言った後に後衛の小春がいきなり「バン!」って言いながら銃を打つ真似をしたんだけど、たったそれだけなのにめちゃめちゃ笑ってしまったし周りも笑ってた。例えばこれ小石川とかがいきなり「バン!」とか言い出したら完全に頭おかしいんちゃう?になる訳で。「掴みは、OK牧場♡」の発言がこんなにしっくり来た小春は初めてだった。

 

・しかしラブルス曲は2ndに引き続きテニスしてないので怒った。いやゲイゲイゲ~イもピンクピンクピ~ンクも可愛いよ? 可愛いけどテニスして……3rdでも一心同体歌ってほしい。笑かすだけやあらへんで♪テニスの腕~も真打クラス♪ 公演としては楽しかったけど演出は色々クソだったので、全氷ほどではないにしろ「あー1stの映像観たいなー」になってしまったしなんとGYAOの無料配信が1st四天!見ました。

 

・小春にすっかり目線も心も奪われてしまったのであまり見てなかったけど実はユウジも悪くないのでは? 1stが両方小春ヤクザ、その反動を受けるように2ndが「うわきか><しなすど><」だったので(これは私が2nd四天を最初の青年館公演しか観てないからかもしれない)、もしかしたら一番丁度いいユウジが今ここに来ているのでは? それに本当に良くない場合は逆に印象に残るし。千歳のことです。2.5の云々ではなく単純に演技が微妙。3rdともなると抜きん出てやべえ……みたいなキャストも少ないので、久々に「あーこれが!成長を!なんとかかんとか!」と思いました。小石川に関しては本当に何も憶えていない……。彼の場合はそれが正解なんだけど、ここまで正解過ぎるとせっかくテニミュに出てくれたのにとキャスト本人の気持ちを案じてしまう。

 

・私が3本の指に入るぐらい大好きなシングルス戦の一球勝負。10年前のN○K教育テレビみたいなCG、やりたいことや伝えたいことは理解できたので安っぽさには目を瞑ろう。問題は一番最後の超ウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐テニスの王子様で一番ダイナミックな人体の躍動を感じるあの技、打ってないじゃん。映像で打った? いやいやいや嘘でしょ。あれこそ波動球を受けるタカさんと同じくらい肉体で表現しなきゃいけない技じゃん。あんなんじゃ金ちゃんの「半分やんけ!」からのページ捲って縦型見開きサムライドライブ主人公越前リョーマ真下作品タイトルロゴテニスの王子様バーーーーーーーン四天宝寺戦完!!! にならないよ。不完全燃焼だよ。あの話の最終回かと見紛うほどの勢いと爽快感が大好きなんだよ。こんなんじゃ大亜門先生も掲載翌週即パロディなんか描いてくれないよ*5。3rd全氷公演がクソだったのは「3周してまだそんなことも分からないのか」みたいなのが多かったけど、3rd四天公演のクソな部分は「3周したし過去作から変えてみた結果クソになってしまったんやな……」みたいな方向性だと思う。なんとなく楽しい公演だったなあって思えるのは私が最早テニモンとしての余生を過ごすババアだからであって、一球勝負の演出については嘆息しか出ない。

 

・巷で話題(?)の青学校歌については笑ってしまったクチだけど、どちらかと言うと四天校歌の方がネタ切れを感じた。山吹にも四天にも失礼だし甘ちゃん判定でもあの曲を100%で楽しむのは無理。

 

・かわかみの亜久津は相変わらず優しすぎる(批判ではないが)。タカさんの胸ぐら掴んで彼なりのエールを贈る時めっちゃ怖いのに瞳の奥がめちゃくちゃ優しくて、彼の亜久津は「太一……」の亜久津だもんな……と山吹公演を思い出した。回を重ねる毎にどんどん優しくなっていく亜久津先輩の声色。

 

・群舞大好きだからThis is my best!の最後とかふわふわの最後を踊る亜久津先輩に、吹ライの至近距離でシャカブン下パートを歌う彼を見た時以来の亜久津仁の「生」を感じた。ファイトブンブーン。それに加えて前回の記事の終わりに書いたこととかで感情がぐちゃぐちゃになって泣いた。

 

・ふわふわで亜久津先輩があいにーじゅー!のピンポイント指差しを最前っていうかサイド?のお客さんにやっているのをそこから15列ぐらい後ろから見て爆沸きしてキャーーーーー!!!って騒いでしまった。あれ間近でやられたら5歳児はチビる。先日吹ライ映像を久々に見て客席降りで画面外の女の子を指差すキヨスミ先輩を見て萌えた時にも「まさか……」と思ったけど、千石清純(×この世の女の子ぜんぶ)の所為で他人宛のファンサにも沸く体質になってしまった。かなめサエが爆撃した辺りが一気にキャアアアアアって沸く(文字通り沸騰したお湯みたいに沸き立ってる)のを数列後ろから眺めるのも面白かったけど、亜久津先輩が手元を見ないながらもしっかり手を差し出してハイタッチ体制万全なのは面白さよりも萌えの方が勝(まさ)った。

 

・缶バッジ、山吹8人やっと揃ったね。

 

 

 

 


気が早いので私の3rd振り返り記事を書いているのですが、ツイッターをやってない所為か(やってるけど)表に吐き出してない感想を盛ってしまい不動峰~四天公演で10000字に到達してしまったので端折るために書きました。長い。

*1:肉体が存在する次元の話

*2:「イケメン」と書くとペアプリのイケメン特集に千石が含まれていたことや根本的な作画の問題もあるので、ここでは作者が容姿の美しさに言及したという意味で「美形」と表記します。同様のキャラは大石くんぐらいでしょうか。佐伯の「無駄に男前」はテニミュからの逆輸入後付け設定なのでここでは除外としますが、あれも美形として描かれているととって問題は無いでしょう。

*3:美術手帖の日吉役うつみくんの「支えなきゃ」みたいな発言。あのギラギラしたみうらの跡部を「支えなきゃ」と思わせるのは年齢以外の何物でもないし、そもそも氷帝跡部を支えるようでは成り立たない。

*4:しかし私はもりたのキヨスミを千石清純としても、千石清純から脱皮した存在としてもそのすべてを肯定しています

*5:太臓もて王サーガ