きみを探して / キヨスミ香水譚

香水にね、ハマった訳じゃないんですよ。「それ」に辿り着くまでに別の香水を買ったこともあったし、香水のディスカバリーセットを買ったり、NOSESHOPの香水ガチャやランダムセットにチャレンジしたりしてたから香水好きなのかなって思われるかもしれないし好きか嫌いかで言ったら勿論好きなんですけれども。

私があんなに色んな香水に手を出していたのは、ぜんぶ「私が思うもりたのキヨスミのイメージに合致した香水」を探していたその延長にあるものです。最初に買った轟くんとの香水以外の、「ちょっと違った香水も欲しいなあ」とか、「これは轟くんにあげたいなあ」とかそういうのは、ぜんぶキヨスミ先輩のことを私なりに想った後に、先輩が引き合わせてくれたものです。

 

 

 

いい歳だしそろそろ香水のひとつでも持ってみようか、と思ったのは確か1年半か2年ぐらい前でした。香水は肌に乗せるもの。いくら口コミで高評価を得ていたり、ムエットの匂いが素敵だったとしても、自分の肌の上で同じように香ってくれるとは限りません。いきなりボトルで買うのは冒険が過ぎる。レビューを参考にしつつ、私が最初に買ったのは定番も定番、ランバンのエクラドゥアルページュのミニサイズでした。楽天で600円弱(当時)のそれをアトマイザーに移し替えてワンプッシュ。あ~お嬢様のにおい~~と自然に背筋も伸びました。なるほど香水とはこういうものなのだなあ。

 

それから半年か1年後の2019年の11月。ふと目に入った残量半分ほどの紫の液体を見て、チャチいのじゃなくて丸々一本の、「これぞ」というものが欲しいと思った私は、日本橋三越に店舗を構えている香水メゾンのサンタマリアノヴェッラのことを思い出しました。ホームページで色々調べるうちに、天然モノ夢女の私は「クリスマスも近いし轟くんからプレゼントしてもらったという体でどれか1本買うか*1」と思い至り、何点か目星をつけて銀座の本店へ向かいました。右と左にそれぞれ違うものを付けてもらってどう香るか半日試したい(今日は買わない)のですが……と告げて、何種類かをムエットで試香。最終的にノヴェッラの代表作のひとつである『ポプリ』と、ラインナップの中でも比較的新しい『チッター・ディ・キョート』を付けてもらい、有楽町の丸ピカまで歩いてザワを観に行きました。上映前の座席でくんかくんか。上映後の座席でくんかくんか。ノヴェッラの店員さんは「当店の最初の香水としてはポプリの方がお薦めです」と教えてくれたし、二つを嗅ぎ比べても多分そうなんだろうなあと感じましたが、私の鼻とホームページの紹介文を読んだ脳味噌はチッター・ディ・キョートを選びました。轟くんが「私」にプレゼントしてくれるなら、こっちだ。100mlと大容量なので、轟くんとシェアして使ってます。

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ほんとはよみランARでこれ持って彼女面してるツイートがあるんだけど何故か私のアカウントの過去ツイが検索できず


 

 

ここで落ち着かないのが私というオタクで、これが「轟くんが私にプレゼントしてくれた香水」なら「もりたのキヨスミのイメージに合致する香水」がどこかにあるのでは……?と思い付いてしまったことから私の長い旅路は始まりました。

 

 


テニスの王子様は版権キャラクターフレグランスのプリマニアックスとコラボしており、私がキヨスミ香水を探している最中にも不動峰・六角のイメージ香水の発売が発表されました。あーこれは次回で聖ルドルフと山吹が来るな、と。しかし私が欲していたのは千石清純のイメージ香水でもなければ公式から「これ」と提示されたものでもなく、テニミュ3rdの千石、それも「私が思うもりたのキヨスミのイメージ香水」でした。先日めでたく千石清純のイメージ香水も発表されましたが、指輪の時とは反対に、今回それを買う予定はありません(決してプリマニアックスのそれがイメージにそぐわないと感じたのではなく、寧ろ紹介文を読む限りでは私が選んだものとは比べ物にならないほどに「千石清純」を表わしていると感じました)。


もりたのキヨスミも千石清純のひとりなので、まずはオレンジ(タンジェリンやプチグレン含む)やオレンジフラワー(一応ネロリも含んだ)を基調とした香水を中心に探し始めました。しかしこの手の香水は圧倒的にシトラス寄りの香調であることが多く、ネロリの場合は重さもあり、私がもりたのキヨスミに感じている「甘さ」からは少し外れたものばかりでした。加えて私は「別のキャラ(戦極凌馬)を想起させるためレモンが含まれる香水は除外」という縛りプレイを課していたため、選考はかなり難航しました。甘いだけじゃなくて何処か苦みも感じさせるような、そう、ビターオレンジの渋さは悪くないんだけどその上にもっと甘さが欲しい。都内で香水と言えばココ、と言われる新宿伊勢丹に行き、オタク趣味とは関係なく気に入ったディプティックのオレーヌ*2片手に店員さんにあれやこれやと聞きながら大量のムエットを貰い帰宅。それでもこれぞというものに巡り会えず、妥協を許さぬ情念を胸におぎゃ~~~~~これもレモン入っとるがな~~~~と雄叫びを上げながらネットの海を彷徨う私にひとつのマシュマロが投げ込まれました。

 

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本当にありがとうございました。結論から話すとここで取り扱っている香水を買うことになるのですが、教えていただいたのが今年の3月末。そう、時は既にコロナ時代。新宿や銀座の繁華街まで赴くなんてとても恐ろしく、そうこうしているうちに緊急事態宣言が布かれ実店舗は休業。香水の説明文と実際に付けた時の香りの不一致を何よりも恐れる私は、通販でミニサイズの香水ガチャやテーマに沿ったランダムセットに手を出し、気になっていたのに入手できなかったものをメル狩るという地獄の道へ足を踏み入れたのです。ずぶずぶ。

 


ランダムで手に入る可能性のある別の香水を目当てに買ったセットで、キヨスミ香水よりも先にキヨすど香水に出会いました。キヨすど香水!?なんだそれ!? こちらです。

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甘い。ばちばちと冬の暖炉で燃えるような甘さ。タンジェリンが入っているとはいえ渋みやダークな感じが一切無いので(私の思う)キヨスミ本人ではないんですが、キヨスミ先輩が後輩の女の子(付き合ってないし付き合わない)にこういう女の子であってほしいな、とかずっとしあわせでいてね、とかそういう思いを込めて贈るとしたらこれだと思います。あと私が初めてもりたのキヨスミを観たのがクリスマスイヴなのでそれも含めて。TDCではあったけど、アリーナ席なのでバルコニーではないんですが。

『ノエルオバルコン』とはフランスの諺『Noël au balcon, Pâques au tison(バルコニーのクリスマス、残り火のイースター)』から取られています。クリスマスの頃がバルコニーで過ごせるほど温かかったら、次に来るイースターの頃は反対に暖炉を使いたくなるほど冷え込む、みたいな。しかしただの諺なので、フランスの気候が必ずしもそうなる訳ではないようです。ジンジャーブレッドや色んなお菓子と一緒に過ごす温かなクリスマス、しあわせいっぱいの香り。

 


もうこれ買って終わりにしようかな疲れたよキヨスミ先輩……とフランダースの犬よろしくキヨスミぺんぎんと一緒に3rd山吹のクリアポスターの前に横たわりそうになりましたが、やれることはぜんぶ試さないと気が済まない性分の私はすんでのところで蘇生し、どうしても気になっていたものをメル狩りました。

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ノエルオバルコンと同じくETAT LIBRE D'ORANGE(エタリーブルドランジェ、以下ELO。直訳すると「オレンジ自由国」なので、色や果物ではなくかつてアフリカ南部にあった国を由来としていると思われます)の『ダヴァナンファン(DIVIN’ENFANT)』。直訳すると「神の子」――と言えばテニスの王子様の世界では幸村精市を指しますが、NOSESHOPがこの香水に与えた*3『オレンジの背教者』というネーミングに私の感性はぐちゃぐちゃに揺さぶられました。

 

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背教
キリスト教の用語で,ひとたび教会の信条を受入れながらのちにそれを意識的に捨てることをいう。

 

「原作者は神である」。言うなれば原作者が生み出したキャラクターはすべて原作者(=神、創造主)の子供のようなものです。幸村精市は「神(God)の子」ですが、テニスの王子様のキャラクター達は皆等しく「神(Creator)の子」です。散々言葉にしているとおり、私はもりたのキヨスミはキャラクターという神の子である「千石清純」を3次元に再現するための存在であると理解しながらも、彼が千石清純そのものではないこと、そしてその差異も含めた上で彼の存在を愛しています。仮にもりたのキヨスミが千石清純ではなくなったとしても(そんなことは有り得ないのですが)、私はもりたのキヨスミが大好きです。原作よりも身長がうんと大きくて、顔立ちが甘くて、こっちが想像するより遥かにコミュ強で、ちょっとお兄ちゃんっぽくて、ずっとテニスが大好きで。そんな彼の存在がほんの僅かでも神の意志に背くものだったとしても、私は他の誰でもない彼の方を向いて胸の前で指を組みます。また、2年前の夏の一件で原作のオタクを上がることにしてなおテニモンであり続けた「元原作厨」の私が一番の背教者でもあります。今の私にとって「神」に近いのは、千石清純そのものの方です。

 

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さて香りの方はというと。ノートの記載がトップ・ミドル・ベースに分かれていませんが、最初にオレンジの花の爽やかな甘さと、その下にあるマシュマロのようなグルマンノートならではの甘さが届きます。キヨスミの持つ甘さって、顔面も含め柑橘系よりもスイーツ系だと思うんですね。キヨスミグルマンノート説の根拠のひとつに、DL2016でMCの森山さんが声をかけた観客の好きなキャラが登場してくれるトークコーナーがあります。横浜公演で1回千石清純が指名され、観客の女の子の質問は「今日あった一番ラッキーな出来事は?」でした。絶妙な質問ですね。私だったら「テニスは好きですか?」とか激重質問投げてたので当たったのがこの方で本当によかったです。この時原作厨の私は1階席の何処かで「(それは今こうしてキミに呼んでもらえたことだよ♡って言え!)(それは!キミに!呼んでもらったことって!!言え!!!)(言え!!!!!)」と必死の形相で念を送っていたのですが、キヨスミがうーん、うーん、と悩んで捻り出した回答は「さっき南がドーナツをくれた(自分の分のドーナツを譲ってくれた)んですよ~(にっこにこ)」だったんですね。お前それはもりたときたがわの楽屋でのエピソードではないのか!?とずっこけたんですが、もりたのキヨスミ全肯定オタクの私はここにキヨスミが甘いものを好きである可能性を見い出しました。身も蓋もないことを言えば甘党なのはもりたくん本人です。

 

咲き乱れるオレンジの花々を掻き分けた先に、甘~いお菓子とほんのり漂ってくるほろ苦い香り。これがコーヒーや多分レザーの匂いなんですが*4シトラス系の酸味や渋みともまた違う、この一筋縄ではいかない、平べったい表現をすれば ~闇~ を覗かせる感じがが私の思うもりたのキヨスミには必要不可欠なので、これだな、きっとこれだと暗中模索から答えを導いた私はダヴァナンファンの50mlを購入しました。100ml、本当に減らないので……。私の肌の場合ですが、手首につけると開幕のオレンジの花の香りがしっかり出て、寝香水として胸元にかけるとそれが弱まる代わりにミドルまでベビーパウダーっぽい香りが強く出ます。私が子ペンギンであるということを察知して寝かしつけようとしている……!?

 

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香水ガチャやら何やらで入手したミニサイズ。これは自撮りです

 

 


キヨスミ香水に辿り着くまでに色んな香水を試してきた訳ですが、そんな中で「轟くんは香水を付けないと思うけど私はこれを轟くんにあげたい」という香水にも出会いました。

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いやあの、決してピアノイメージだからとかではなく、まあそれも無いとは言い切れないんですが(※隙あらば轟くんにピアノを弾かせようとするオタク)、轟くんにはこの重たいのに柔らかいミルクの中へと沈殿するように誰にも邪魔されず、安らかな眠りに就いてほしいんですね。昔遭った嫌なこととか思い通りにいかないこととか寝ている間だけでもぜんぶ忘れて、しあわせな夢を見てほしい。もし次にボトルで買うとしたらこれかなあ。でも轟くんと私にはチッター・ディ・キョートがある上に、オーケストラ・パルファムもノヴェッラと同じで100mlしか取り扱いがないんですよね。轟くんのイメージ香水はなんだろう。私だったら個人的に一度行ってみたいのもあり、とりあえずセルジュルタンスに行ってみます。まえださんが付けてるAesopのマラケシュみたいなオリエンタルスパイシーノートは、轟くんではない(歩夢くんは付けるかもしれない)。

 

これからの季節につけやすい香水は、ディプティック日本橋高島屋店オープン記念限定セットで『オイエド』『オーローズ』(あとピアノ・サンタルとの比較もかねて少しミルキー(メインはイチジク)な『フィロシコス』)の7.5ml(トラベルサイズ)を入手しているので、他のミニサイズと合わせて楽しみたいと思います。

 

 


◆どうでもいいおまけ:ミニサイズのスプレーボトルの質

ELOのミニサイズを7種類ほど持っているんですがここのボトルは割とプッシュしづらく、物によっては非常に出が悪いです。だらっと液っぽく出てくる物もあります。ラボラトリオ・オルファティーボはまあまあ。ミニサイズをディスカバリーセットとして出しているオーケストラ・パルファムのは綺麗に出ます。ここのはピアノ・サンタル以外も重めの香りが多い。ミニサイズ単品での取り扱いがあるブランドの中ではニコライのボトルが圧倒的にクオリティが高いです。ミストの細かさもサンプルと思えば申し分ないですし、他のブランドのに比べて綺麗に広範囲に噴射してくれます。ストレスフリーでプッシュするのが楽しい。手元にはアンジェリーズ・ペアーとキャップ・ネロリがありますが、前者は今の時期にぴったりの香りだと思います。

 

 

 

*1:キヨスミは中学生なので「キヨスミ先輩から香水を貰う」という発想は微塵も無かった

*2:これは買ってしばらくした後に思ったことだが、オレーヌはプリレジェの久遠誠一郎が恋人が女性だった場合にプレゼントしそうな香りだと思うが私は久遠の彼女ではない

*3:電話で「ELOの公式サイトにはNOSESHOPのサイトにある日本語タイトルに該当する文言が無いがこれは公式ではなくNOSESHOPが独自に付けたものか」と問い合わせたところYESの回答を得たため。ただしELOもNOSESHOPの香水ガチャを本国の自店舗で取り入れたりと交流があるので、実質「半公認」ぐらいの扱いかと思われる

*4:タバコは私の鼻では感知できず。ペンハリガンのコンスタンスやトムフォードのタバコバニラは匂いがしたけど、あんまりタバコの匂いがすると亜久津になっちゃうので今回はこれでよし