爽やかさよりも熱が欲しい / テニミュ4th聖ルドルフ山吹公演感想

7月8日夜公演を観劇。残りは4th峰での二度手間から学んで凱旋1公演のみしか確保していません*1が、もう一度ぐらいは現地で観ておきたい気もするんだけどザワ新作のライブ試写会が凱旋期間に食い込んできたのでどーしよ。少なくとも大楽配信は購入予定です。


基本的に他校や山吹や千石を観ています。1公演しか観ていないし配信も見ていないので記憶違いについてはお手柔らかに……。

 

 


原作や旧シーズンから変更されたもの

山吹中テニス部のユニフォームの配色が緑に黄色ライン→緑に橙ラインジャンプフェスタ2003限定YONEXコラボユニフォームポロシャツにかなり近いものへ変更
・千石と亜久津のラケットがそれぞれグレードアップ

・裕太の怪我のおそれを観月に教えるのが原作では竜崎先生 → テニミュ3rdまでは手塚 → 4thでは井上
・河村と亜久津がレストランで話すシーン → レストランではないどこかで立ち話をして河村は缶ジュースをかけられる、亜久津の足を引っ掛けて転ばせるリョーマは引き続き省略
・伴爺の台詞諸々 → 3rdまでは代弁者が千石中心 → 4thは分散気味
・千石戦で左足を痙攣した桃城が竜崎先生に「シー」をする → 「みんなには黙っててくれよ、顧問のばーさん」みたいな台詞へ変更(なぜこんな細かいところを覚えていたのかというとここの桃ちゃん先輩があまりにもカッコよすぎたため
・伴爺の亜久津に関する評価の台詞(10年に一人の~~のくだり)を代弁するのがほぼ壇に一本化
・伴爺の代わりに亜久津の才能と欠点について言及する千石の台詞「んー、もったいない」が原作にはないため4thでは削除
・亜久津に緩急をつけるアドバイスをする伴爺 → 3rdまでは千石 → 4thでは南かつ亜久津も試合中に「確かに南の言う通りだ」と言及
・亜久津が負けられない理由について語る伴爺 → 3rdまでは山吹 → 4thでは青学の乾中心(これは記憶違いであってほしい)河村(ご指摘ありがとうございます!)
・亜久津「こんな場面でよくもヌケヌケと」←旧シーズンでは「よくも」が省略されていた
・亜久津から壇への「可能性はあそこにあるかもな」の台詞が原作にはないため4thでも削除
・テニスコートを去る亜久津が放り投げたラケットを受け取るのが3rdでは壇 → 4thでは千石

 

原作から省略されたもの

・不動"産”中のくだり(千石の「強いんじゃない?」の台詞はここなので当然それもなし)
リョーマの銀華成敗(亜久津の銀華襲撃シーンはあるが「なあ亜久津」から始まる千石の(と思われる)台詞の回想はカット)(旧シーズンでもなし)
・青学戦を棄権する銀華中
伴田幹也
・桃城のけいれんを知った千石の「なぬ」(旧シーズンでもなし)


原作や旧シーズンから増えたもの

・裕太の過去回想が旧シーズンよりも原作を踏襲して詳細なものへ
・山吹戦D2が一試合まるまるニトキタ曲
・亜久津の幼少期回想(キノコヘッド亜久津をボーイズ、白玉さんを井上役のきただいが演じる)

 

 


期待のしすぎは泣きを見ると散々経験してきたので、一切の期待を捨てて観に行きました。それにちょっと怖かったんです。当ブログをご覧いただければわかるとおり、3rd千石のオタクの私は新しい千石清純と対峙したときに自分が何を思うのかが怖かった。原作厨も上がっていれば、彼(千石清純本人)のグッズを新しく買うこともない。今の私は、もう彼のことは昔ほど好きじゃないんじゃなかろうかと。もうもりたのキヨスミしか好きじゃないのかもしれないなあと。でもやっぱり好きでした。M2で舞台上に現れた新しい千石さんを目にしたら、ああ千石さんがいるなって、私たちはまたこうして千石さんに会うことができるんだなって思ったら涙が出そうになりました。思い返せば新テニミュ2ndのテニボ千石にかなりの勢いでキレてた時点で、千石清純へのめんどくさい感情は胸の中に全然残ってるんですよね。なんだ私、千石さんのことまだまだ好きじゃん。そんな涙はボールカートに乗せられて赤ちゃんみたいに運ばれる千石清純を見たらすっこんだんですが。わかるよ、3rdでトリオがもりた(当時身長180cm)運ぶのに苦労したからカートで運ぶことにしたんだよね、そうなんだろうけどDL2018の箱真田に近いものを感じたのは私だけ?

 

 

 

 

youtu.be

テニミュ4thは「新しいテニミュ」を謳い、脚本も曲も演出も一新してスタートしました。前回の不動峰公演でもDo Your Best!のフレーズを出してはいましたが、今公演では誰がどう聴いても曲の中に過去シーズンの名曲『24/365』を織り込んでいます。ダイジェスト映像で流れる「WOW WOW~~」だけでなく「テニスの試合に賭けた俺の24時間トゥエンティーフォー」も歌われています。これを劇場で観た瞬間、正直旧シーズンのことも旧シーズンから観てるオタクのことも馬鹿にしてんの?と思いました。テニミュ4thが選んだのは旧シーズンから「改訂」した新シーズンではなく、良かった点も悪かった点もすべてリセットして、完全にとは行かずともほぼ一から創るテニミュの筈です。それなのに過去の名曲のキャッチーなフレーズだけを拝借して、楽曲スタッフは一体何をしたいのでしょうか。観客にとって耳馴染みのいいものを取り入れてテニミュらしくしたかったのでしょうか。でもそれは4thが考えるところの「昔のテニミュ」ですよね。オタクが観たいのは過去の幻じゃないし、テニミュ4thが魅せたいのもそんなもんじゃないですよね? 4thがこれまで通り旧シーズンを踏襲したもので、その中に過去曲のフレーズを盛り込んだのなら理解できます。しかしそうじゃない。刷新すると言いながらそれをやりきれないのは、旧シーズンの良さを認めると同時に4thシーズンへの自らによる侮辱、あるいは創造することへの諦めでもあると感じました。振り返るな過去は忘れろ、と歌っていたのは旧シーズンの立海でしたね。「新しいテニミュ」を掲げたくせに、都合のいいときだけ旧シーズンに頼るなんて無様な真似はしないでほしいものです。


そういうのを抜きにして楽曲の感想を述べるなら、過去シリーズの曲を織り交ぜることによってオタクの郷愁を誘おうとしたのか何なのかはわかりませんが、却って新曲の無味乾燥さが悪目立ちしてしまい悪手に聞こえました。校歌は特に聖ルドルフのそれがよく、前公演の不動峰のもよかったので、学校のような性質やカラーがはっきりしたテーマ曲をつくるのは得意なのかなあと。これから4thには『俺たちはブリザード』という強敵との戦いが控えているけれど、校歌についてはまったく期待できないということはなさそうです。公演を通しての楽曲はワンパターンというか、前公演と比べても似たり寄ったりで印象に残りにくい。桃城VS千石戦への既視感は越前VS伊武戦の全員で歌う曲だし、その後のテニスの王子様という作品を通しての節目でもある越前VS亜久津戦の曲は迫力が無く盛り上がりに欠ける。これが本当に辛い……。不動峰公演という4thシーズンを体感した時点で、そしてルド山一括公演と知った時点で『勇気VS意地』級の楽曲が来ることは諦めていました。それにしたってもうちょっとやりようがあったんじゃないかと思わざるを得ません。アニメはその辺わかってやってくれていたなあ。


4thは「ここで曲が欲しい!」と思うタイミング、例えば決め台詞や決めゴマの後にあえて曲を入れず、さらっと流して別の節目に曲を挿入しているように感じます。曲が欲しいと感じるタイミングは人それぞれですし、目立つシーンの直後に曲を挟まないことによって原作の台詞そのものを際立たせようとしている試みもあるのかなと受け取っています。三ツ矢作詞では原作の台詞をそのまま流用する曲も多々ありましたが、4thはそういうことをしなさそう。原作台詞流用ソングって一見(一聞?)手抜きのように考えられるけど、これって実はすごいシステムなんですよね。観客が漫画の台詞をそっくりそのまま憶えるのに一役買っている。取り立てて好きなキャラじゃなかったとしてもみんな日吉のプロフィール言えるでしょ? 私もブログを書くために原作を読み返しながら「♪菊丸は~もう限界さ」って何度も口ずさんでしまいました。4thで公演後も口ずさめたのは峰校歌と……どの曲だ? かなり似たり寄ったりでこれはこの曲だという確信を持ちにくい。千石ソロ曲は射手座が獅子座を射止める~♪みたいなフレーズが面白かったです(千石が射手座で桃城が獅子座、クソデカセットに映る星座は星座占いの黄道十二星座)。そういえば初演で酷評だったクソデカセットについては良くも悪くも慣れました。造っちゃったから易々と変更・撤去もできないんだろうし、その分キャラが見えなくなるような演出は極力なくしていたような気がします。前方席で観る分にはあまり気になりませんでした。一度中央の柱(梁)に千石さんがドン被りして怒りましたが。

 

 


4thはキャスト本人のスキルやステータスが全体的に高めだと感じます。「クオリティ」と言ってしまうとどれだけキャラクターに成りきれているかも含まれてしまい、すると観客ひとりひとりの思うキャラクターの像にどれだけ合致しているかという個人の好みの話にまで広がってしまうと思うので「ステータス」と表現しました。単純に歌が上手い、ダンスが上手い、派手に動けるという観点。特に4th観月はテニミュ界に舞い降りた羽生結弦だと思うのですが今のところ私しか言ってる人がいない。俺はこの目で羽生結弦(実物)を何度も見てきたからわかるんだ。間違いなくあれはテニミュ界の羽生結弦だ。ホームページのビジュアルよりも実物の方が何十倍も綺麗でした。歌も安定しているしダンスもキビキビ且つしなやかに動く。池田に続いて連日写真が売り切れるのも納得のキャストです。ネームドテニボとして登場した池田は、だからといって大した出番が与えられる訳でもなく。物語の枠からはみ出さず、収まる範囲に収まっていたので私も写真買うね。


テニミュ2ndでますたくの亜久津が割とよかったからこそ、彼が山吹公演でちゃんと「怪童」になれるのか心配だったんですよね。まず顔が新テニ作画寄りの細い目。加えてますたく本人も秋沢さんと畠山さん(種ヶ島と大曲)にとぅもろー(真田)とまとめて可愛い可愛いされて、テニモラジオ収録のときに自作アクセ三人にプレゼントするぐらいのめちゃカワ後輩っぷりを披露していたのでこの子は無印のヤバい亜久津になれるのか?と。蓋を開けたら4thが銀華襲撃をしっかり盛り込んだのもあって、歴代で一番恐ろしかったです。未成年喫煙はするわ暴力は振るうわ、しかも蹴り上げるときの脚が長いし打点も高い。あの可愛いますたくはどこにもいなかった。聖ルドルフ戦を締め括る曲を青学とルドルフが歌う中、不敵な笑みを浮かべながら銀華モブをじりじりと、歌唱する選手の間を縫うように追い詰める亜久津仁。あまりにも異物すぎてただでさえ寒い空調の会場にいるのに背筋が凍るようでした。あそこで亜久津が舞台上をうろついているからこそ一幕が「ルド山公演」として成立する、まさにキーパーソンとして舞台上にいるのが亜久津仁。逆にここで亜久津がいないと一幕がただの「聖ルドルフ公演」になってしまうので、ルドルフ戦の終わりと亜久津仁の銀華襲撃を交差させた演出は素直に感嘆しました。


TAISEIくんの千石は歴代で一番ステータスが安定してるので観ていて安心感があります(特化型はとんでもアクロバティックな2ndせーやちゃん)。歌もダンスもそつなく熟すしなんならバク転もできる。え!? バク転できるの!? せーやちゃんがいるから霞みがちだけどバク転できるの十分に凄いですよね。さとうご(3rd木更津)だって元々できなかったんだから*2。4th千石は先代と同い年しかも学年では上なのもあってかフレッシュ感や中学生感には欠けるけど、高さのある虎砲が打てるのは見事です。全身使って勢いのある打球を繰り出す。運動量の多さが心配になるほどの迫力があります。それと背が低い(※先代比)。東方を見上げる千石さんを見て、あっこれが本来のサイズ感……!と無駄に感動しました。ひとつ願望を挙げるなら、通常(演技)時の笑顔が心から笑っていないというか目の奥が笑っていないように見えるのをもうちょっと頑張れ……! 役者本人の緊張がまだ解けていないだけならいいのだけれども。本業が役者一本じゃなくてダンスボーカルユニットだからか、歌って踊ってしてる時の方がちゃんと笑ってるように見えます。でも菊丸みたいな天性のアイドルって感じじゃなくて「職業:アイドル」って感じの千石。それにTAIせんごくって言うほど女の子のこと好きじゃないよね? 女の子のお尻よりも真っ当にテニスボールを追いかけてそうな、スポーツマン寄りの千石清純を感じ取りました。客席降りでファンサできるのもオタクの目をしっかり見れるのも確認したので、女の子好きな一面に関してはまだまだ伸び代を感じます。もっと俺たちを愛してくれ!!!!!!!!!!!!(自カプ:千石清純×この世の女の子ぜんぶ!)

もりたのキヨスミはポップアップできなかったけど、TAIせんごくはソロ曲でも飛んでるし絶対ポップアップできる身体スペックだから先代が果たせなかった夢*3を果たしてほしい。俺の夢はお前の夢さ。

 

 


柳沢も相変わらず安定枠だし、赤澤部長もカテコ曲でいきなりバク転バク宙のコンビネーション披露するし、ノムタクの目立たなさも原作通りだし、観月は羽生結弦だし写真売り切れるし、南も地味に歌上手いし、JAEの新渡米だけじゃなくてピチピチ喜多くんも動けて踊れるし(ニトキタは新曲で完全にアクロバットキャラを確立した)、千石さんは理想的なバランス型だし、亜久津は不気味で最強最悪のひとりHiGH&LOWだし、キャストはお見事。それでも公演全体に物足りなさを感じるのは、脚本然り演出然り楽曲然り熱さが足りない、そう、旧シーズンに比べて「熱」を感じないんです。4th初演の峰公演では「青春」というテーマが強く打ち出されている、と、私以外のオタクが述べていたのを何度か目にしました。今公演を観て私が感じたのは「爽やかさの押し売り」でした。聖ルドルフ戦でのじめっとしたものを一手に引き受けるのが観月(と不二)なのはそのとおりだと思います。山吹戦で桃城千石戦を盛り上げてくれるのも嬉しいけれど、この試合の肝は主人公の声優もベストマッチに選んだように越前リョーマVS亜久津仁なのに、山場をそこへ持っていかない。一番「熱」を感じる試合を、ミュージカルならではの演出や楽曲で魅せてくれない。さらっとした、爽やかな、ガツンと来ない、物足りない。ふるち(8代目リョーマ)の「熱しかねえ」に象徴されるものが4thならば「青春」で、それを「すべての試合に通底する爽やかな春の風」と捉えるならば、もしかしたら4thシーズンが料理する「テニスの王子様」は私の舌には合わないのかもしれません。青春の爽やかさと熱さは両立し得ると思うので、これは4thが意図的に軽やかな口当たりにしているのか、それとも。

 

 


4thシーズンは聖ルドルフ戦と山吹戦をひとつの公演に収めたことにより、かつての六角公演にあたるものを緑山・六角公演にするのではないかとあらゆるオタクが見込んでいることでしょう。旧シーズンが通っていない大きな道が緑山中の存在です。4thが「昔のテニミュ」との差異をわかりやすく見せつけるのに、これほど持ってこいの存在はありません。その代わり、3rdシーズンが山吹公演で披露した『観月のルール』のような大きな「コマの外」、あったかもしれない原作の補完を4thシーズンが我々に魅せてくれることはないのだと思います。3rd山吹公演の不二河村VS新渡米喜多ダブルスのような試合を、今の4thが描けるとも思っていません。今公演でニトキタ戦をひとつの楽曲に収めたのは「手法」として適切だけど、一か八かの「脚色」をするような余裕や冒険心を4thは持ち合わせていないのではないでしょうか。これまで築き上げてきたものを一から刷新する、つまりテニミュ4th自体が大きな冒険なのですから。

 

 

 

『観月のルール』の最後の歌詞は「俺たちの熱 天井知らずの熱で」でした。4thが全面的に打ち出しているであろう青春のきらめきや爽やかさも悪くないけど、私は熱を感じたい。次の試合では氷の布陣をも溶かさんとする熱を、劇場の座席で感じられることを願っています。

 

 

*1:東京2公演→観劇後に凱旋2公演買い足す→凱旋1公演目を観て変化も進化も感じられなかったのでもう1枚を手放す

*2:できないのに当然できるものと思われてDL2017のバク転担当を振られてしまい必死に練習した模様

*3:ふるち「俺とれおくんなの人選考えて!!!」DL2016円盤リリイベだったかな?