ラケットが君の武器ならば/新テニミュ、あるいは私の3rdシーズンを終えて

初めて遠征したのは3rd山吹公演円盤リリイベの福岡会場だった。千石役のもりたくんは東京会場にも参加予定だったが、対戦相手である桃城役のましまくんと同席するのは福岡だけだった。友達から貰った抽選券を福岡に、自分のを東京に賭けたところ、開催日の早い福岡の当選ハガキが先に届いた。遠征したことがなかった私は正直参った。母親にも渋い顔をされた。結局ましまくんの「期待しててください!」みたいなツイートに背中を押され、初めて自分で新幹線の切符を買い、日帰りで福岡まで行って帰ってきた。ちなみに後日東京会場のハガキも届いた。

そこから私の遠征へのハードルは下がった。まだアクスタが無かったので、山吹ユニを着たアニメイトのくまをキヨスミ先輩として大阪や京都へ行き、友達の家に泊まってただの大阪観光をしたりした。楽しい世界があるよとこちらへ手を差し伸べてくれたのは、大きな一歩を踏み出させてくれたのは、もりたのキヨスミだった。

 

初めて一人で外泊したのは3rdのラストを締め括る映像配信コンテンツ『Dream Stream』を友達と一緒に見るためだった。未だ猛威を奮い続ける恐怖のウィルスの所為でテニミュドリライの中止を余儀なくされ、代替として用意されたのは画面越しに彼らの姿を見るだけの映像コンテンツだった。1stでは氷帝新規(夏)、2ndではテニモンになれなかった私が初めて最初から見届けてきたテニミュのシーズンでもあり、ここまで駆け抜けさせてくれたもりたのキヨスミのいる3rdシーズンを、たった独り自室で見届けて終えるなんてとてもじゃないが耐えられない。早い段階で友達に約束を取り付けた。その時は日帰りの予定だったがgotoキャンペーンが始まり、泊まった方が却って安くつくと気付いた私は初めて一人で宿を取った。あまり旅行に行かず、行くとしても家族旅行が大半だった私の初めての一人外泊は、キヨスミ先輩と一緒だった。

そしてこれを書いている私は、昨日今日と新テニミュの大阪公演を観て東京へ帰ってきた。ああこれが、1stの頃から円盤の中で散々見てきたメルパルクホールか。15年以上の時を経て、テニモンの私は初めてメルパの地を踏んだ。

 

実は新テニミュのチケット、自力で取ったものもなければ探して掴んだものもない。私の手元にチケットが舞い込んでくるまで紆余曲折あったがそこは省略する。兎に角またしてもキヨスミ先輩のお陰で大きな一歩を踏み出した私は、こうして新たな余生を歩んでいる。

 

 

 

 


(※新テニミュのネタバレを含みます)

 

タイムラインに流れるフォロワーの感想を薄目で見ながら、新テニミュで初めて登場した「テニミュボーイズ」の活躍パターンのひとつを知った。わざわざ特定のキャストを起用するほどではないが、漫画のコマの中にいるキャラクターの代替。しかしその中に千石清純の代替が含まれていることまでは知らなかった。東京公演を一緒に観たフォロワーは「言うか悩んで言わないでおいた」と話してくれたが正直有り難かった。事前に知っていたらそれで頭が埋め尽くされて観劇どころじゃなくなっていた。幕が上がり物語が進み、これが別のフォロワーが呟いてたやつかと視線を上手から下手へ移した最後にオモシロくんと対峙する千石(仮)の姿があった。予想外の演出に度肝を抜かれ、斎藤コーチのメンタルソングとの相乗効果でメンタルをやられ、その後のリョーマvs徳川の曲の記憶がまるで頭に入ってこなかった。いくらなんでも早すぎる。だってほんの1ヶ月前まで、キヨスミ先輩がテニミュの千石清純だったのに。

テニミュのラケットをそれなりにチェックしているテニモンなので、早鐘をつく心臓を押さえながらつい癖で千石(仮)のラケットを防振双眼鏡で確認した。黒いそれはもりたくんが自分用を入手したラケットでもなければ、もりたのキヨスミがDream Streamのみで握っているwenewの型番違いの白(1100か1200、もしかしたら2ndで一時使用していたものかもしれないが未確認)でもなかった。同様に他のキャラクターのラケットを確認すると、原作完全一致がある筈の真田や柳、メーカー一致の謙也もまったく違うラケットを握っている。上記のツイートのとおり(新)テニミュはラケットをできる限り原作と合わせてきており、中学生も3rdから使用されているものを流用している(完全一致のリョーマ跡部やメーカー一致の手塚・白石らが混在していることから窺える)。つまりテニミュボーイズが演じている「彼ら」は、M2で「俺こそが絶対テニスの王子様」の歌詞を口にしない「彼ら」はテニスの王子様ではない。

 

しかしテニミュボーイズがテニスの王子様ではないのかと問われれば、ラケットの見地からもそんなことはないと私は言いたい。

 

テニミュボーイズは8人おり、その中にIGNIOのラケットを握る選手がいる。またテニミュボーイズが演じているネームドキャラの中にもIGNIOのラケットを握る選手がいる。真田弦一郎だ。他にもガットにプリンスのステンシルが入ったラケットを握った選手もいれば、新テニミュ今公演の謙也と坂田もプリンスのステンシルが入ったラケットを握っている。ちなみに謙也と坂田が同時に登場することはない。おそらくテニミュボーイズはテニミュボーイズで各々にラケットが与えられており、それをネームドキャラを演じる時にも使用していると私は踏んでいる。ウィルス感染対策の面から考えても、一人に一つのラケットを用意するのが安全だろう。テニミュは名前を持たないテニミュボーイズにも、きっと彼らだけのラケットを用意している。テニミュの楽曲『VICTORY』に「この手の平で握るのは俺の武器 ラケットのグリップ」とあるように、正規のラケットという武器を握れない「彼ら」はテニスの王子様ではないが、一つのラケットと共に舞台に立つテニミュボーイズは、名前こそ与えられずともひとりひとりが「テニスの王子様」なのだと私は言いたい。

 

 


──とまあ、こんなところでキヨスミモンの私とラケットオタクの私は、自分の中で渦巻く言い知れぬ葛藤との折り合いをなんとかつけたのである。

 

 

 

 

 


映像コンテンツと共に3rdシーズンが幕を下ろし、友達と泣きながらサービスソングメドレーを歌い、独り帰ったホテルの浴室で再び泣いた。キヨスミ先輩は舞台の奥どころか、画面の向こうへ去ってしまった。えーんえん。生きる理由がなくなってしまった。ここからしばらくあつ森以外は虚無の日々が続き、それでもキヨスミ先輩の誕生日までは生きなきゃ、ディズニーのチケットも取った(3年連続三度目)んだからとなんとか踏ん張らなきゃと自分を奮い立たせてきた。

今年の11月25日はあいにくの天気で、昨年のようにパークのあちこちにアクスタを立たせて撮影とは行かなかった。おまけに新エリアは電波が悪く、誕生日おめでとうツイートも画像の送信遅延で11時26分の投稿になってしまった。キヨスミ先輩はもういないのに、まるで私には11月25日の先という「明日」があるようじゃないかとうんざりした。

しかし私は突然降ってきたチケットで千石清純(仮)の姿を確認するまで、否確認したことによって自分の中にはもりたのキヨスミが存在していることを思い知らされた。3rdシーズンが終わってもなお無意識のうちに信じていたのだ。キヨスミ先輩が私というひとりの女の子に、今でも寄り添ってくれていることを。

いつか3rd観月役のみやぎくんがブログに綴ったように、私たちがもりたのキヨスミを忘れない限り、彼はこの世のどこかに存在し続けるのだろう。もりたくんが会いたくなったら円盤を見ればいいと言うのなら、そうすれば私たちはもりたのキヨスミに何度だって会えるのだ。

 

テニミュでオモシロくんと対峙するあの瞬間、千石清純の魂はそちらへ寄り添っているかもしれない。それでも私はシュレディンガーの猫のように、劇場という箱の中で千石清純の姿を確認していない間は、私の中にあるもりたのキヨスミの姿を追い続けたい。劇場の外でいつまでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


余談

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劇場内では私語厳禁なので隣席でもLINEで会話

テニミュは泰江奏多に即落ち2コマした

 

 

 

 


蛇足

ドリスト公開翌日、gotoキャンペーンを使って得た5000円分の電子クーポンで回らない寿司を食べたかった私はクーポン対象店舗を見つけられずに已む無くうめだ阪急へ辿り着いた。せっかくだし各フロアを見ながらレストラン街に行くかと思い、エスカレーターを登った先にあったのは香水のフロアだった。そこで私は自分のブログの一節を閃くように思い出した。

sdppp.hateblo.jp

キヨスミ先輩が後輩の女の子(付き合ってないし付き合わない)にこういう女の子であってほしいな、とかずっとしあわせでいてね、とかそういう思いを込めて贈るとしたらこれだと思います。あと私が初めてもりたのキヨスミを観たのがクリスマスイヴなのでそれも含めて。

これを買うなら今しかない。noseshop大阪の場所を調べるとグーグルマップ曰く現在地から徒歩5分。

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買いました。キヨすど香水です。撮影地は千石誕のディズニーランドです。それでは皆さんよいお年を。喪中のため新年の挨拶は控えさせていただきます。